柴田さんの種子島宇宙センター一般公開-2008年春、見学記

レポートメニュートップ
ガーランド中継点



2008年4月20日 晴れ 一般公開日

 今日は早めに起床し、準備を整える。南種子に行く前に、上空から見つけられなかった廃船の確認を地上からやるためだ。どうせ今日の後半になればなるほど、そういった余裕は無くなるだろうし。
 まず昨日残したフランスパンを苦労して胃に押し込んで体力をつける。ああ、まだチョコレートパンが余っているよ。昨夜の「料理屋でおいしいもの食べよう計画」崩壊の影響はでっかいねえ。ま、これはあとで食べよう。
 地図を持ってこなかったので、中種子町に一旦出てから増田宇宙通信所の前を通って戻るという無難なルートを考えていたが、たまたま置きっぱなしになっていた観光地図を見ると、宿近くの交差点から県道をまっすぐ進めば行き着くらしいと判明。誰が置いていったか知らないが感謝である。
 宿の主人に挨拶して出発。まずは進路を太平洋側へと向ける。前半は初めて走るルートだが、なかなか快適で、ときたま現れる工事区間や改良前の狭いところに気をつければ、距離的に遠回りにはなるが宇宙センターに行く道路として使ってもいいかなと思える。まあ大抵は一分一秒を争う事態になっているので無理だが。

 後半のルートは10号機延期後に、島内観光をした際に使ったので見覚えはある。あの時は途中で新空港方面に出ようと針路変更して迷ったっけ。うーむ、西之表市に出るならば、まっすぐ走った方が簡単に着いたかもしれんな。
 風速計付きの大きな橋まで来ると、そろそろ廃船のあった場所にも近い。しかし殆ど車も通らないここに湾をまたぐ風速計付きの橋とは思い切った予算配分だな。まあ赤字になればすぐに判る高速道路と違って、数値になって表れないのが一般道だからなあ。もっとも、地元にとっては曲がりくねった道がまっすぐになるのは大きな負担軽減になる。そのあたりの分岐点をどう判断するかだな。
 その風速計を見ると10メートル。意外に強いねえ。

 そして廃船のあったところの入り口だと記憶が一致した地点に到達し、海岸に向けて車を進めてみた。ところがこの道が荒れ果てていて走りにくい。そして海岸の手前で土砂が積み上げられていて実質的な行き止まり。
 仕方なく降りてみると、確かに廃船のあった場所らしい。自信が無いのは既に廃船がどこにも無いため、確認のしようがないからである。何か目印になるものはと見渡すと、川が流れている。これって以前には砂に染み込んで消えてしまうような規模の小川だったのではないかな。もうこれは間違い無さそうだ。そして廃船のあった位置は恐らくここだったよな、と思った位置でデジカメのシャッターを切る。
 (※大当たりだった。後で画像を確認したら以前撮った位置とばっちり合うのに驚いた)
 しかしまあ、漂着した廃船などという滅多に無い面白い物だったのに惜しいことをしたな。朽ち果てた頃には確かに危なかったかもしれないが、中に入るのはちょっとした冒険気分だったはずである。はるかな昔、鉄砲が伝わった理由が南蛮船の漂着だったという話からすれば、種子島らしい観光スポットになりえたと思うのだが。
 (※宇宙へのパスポートに記載され、その後無くなったものといえば、宇宙センターの固体ロケットブースター試験場のモーターケース、いわゆるどんがらがある。ただこれは4号機以降は実験場に入れなくなったため、見ることが出来た人はあまりいないと思うが)
 ただ、廃船が無くなった理由はいまのところ判らない。もしかすると柴田が探せなかっただけで、周囲のどこかに残骸があったのかもしれないし、海岸線の様子から台風などの影響を受けた感じもあったので、またどこかに流された可能性もある。いつか話が聞けるかもしれないので、それまでの宿題としてここを離れた。

 続いて本日のメインである南種子町の宇宙センターへ向かう。告知では10時から一般公開開始なのだが、ツアー受け付けは9時半からとのことなので、それより早めに着こうという計画なのだ。…なのだが、このままだと8時半には楽勝で着いてしまうねえ。
 ゆっくり走ってみたが、それでも随分と早めに着いてしまう。仕方なく宇宙センター内を走ってみたが、まだテントの設営を始めたばかりで、観光客の姿などは無い。
 そのまま一旦外に出て、宇宙センター近くの商店で野菜ジュースとリポDを購入する。パンはいっぱい残っているが、飲み物が無かったためだ。このあと宇宙センターに舞い戻って、駐車場で腹ごしらえ。下手するとこのまま夕方まで食事無しという事態も考えられるから、食えるだけ食っておく。それでも余ったのだが、とりあえず見なかったことにした。

 さて施設見学ツアー受け付けのテント前で待っていると、だんだん人が集まってきた。殆どが地元の人らしい。報道ではNHKの腕章をつけた人がいた。他にもいそうなのだが、確認できたのはその方のみ。
 テントには今日のイベントの概要が書かれているが、メインはこのバスツアーのみで、あとは子供向けのペットボトルロケットやモデルロケットの打ち上げがあるだけ。科学技術館はいつも通りに近い展示内容となる様子だ。筑波や相模原などの公開を見ているので、少し寂しく感じる。
 また宇宙日本食版カレーの販売もあるらしいが、用意した100食を売り切るのが難しいかもしれないと聞く。なんでも以前、筑波の一般公開時に提供している宇宙食風定食の販売をやったことがあるが、売れ残って仕方なく職員が買って食べたらしい。筑波では売り切れてしまうのだが、さすがに島民プラスアルファの来場者では難しいらしい。
 (※筑波の宇宙食風定食も、より実際の宇宙食に近くなるようにアップグレードしてほしい。いやチューブ食など往年のものにダウングレードしてもいいぞ。要は宇宙食としての雰囲気を出すことだ)
 ちなみにカレーは普通のものより濃い目の味付け。宇宙では味覚が鈍感になるための対応である。…つまり、ご家庭のカレーも濃い目に味付けをすれば宇宙食風となるのだろうか。もしカレーを作っていて濃い目になった場合、「宇宙食をイメージした」なんて言い訳してみるといいかも。
 それから以前は多くの入場者があり、この時間帯ともなれば駐車場に入るために車が列をなしたらしい。しかし今は通年で施設見学のバスツアーがあるため、今日に集中することもなくなったとか。
 …だからさあ、今日みたいな日はもっと沢山の施設を公開しようよ。今日はVABの公開があるらしいけど、他にも見せなくてはならない施設がいっぱいあると思う。
 恐らくは衛星組み立てに関わる施設公開は最近はやっていないのだろうと思えるし、ブロックハウスの中もそうだ。公開して問題になるようなものでは無いと思うがどうなんだろうか。
 まあ情報収集衛星が問題なんだろうけどね。軍事関係は別の施設を作ってもらって、実用や探査に関わる部分と切り離さないと、顧客はもちろん開発関係者や研究者ですら入れなくなりかねんな。ほら、ちょうどVABが錆びてきてるし、隣にどーんと別棟を造って軍関係は全てそちらに入れちゃうとか対策をお願いしたい。

 さて9時半になり受け付け開始。本日は計6便のツアーが組まれているが、柴田はまず本日の第1便を選択する。一番はいいことだ。ただしこれには総合指令棟での打ち上げ模擬実演が含まれていないというので、午後の第4便も付け足しておいた。第1便の選択理由は、まず今回の公開の全容を真っ先に知りたいため。また2回も行くのは撮影の不備などのフォローと、カメラを変えて撮影したりするためである。そしてもちろん野次馬根性もある。
 ただ各地点の見学時間が10分程度と短い割に、全体の見学時間は1時間オーバーと長いので、そう何回も乗れないのが残念である。バスでなく自分の車で移動して納得できるまで見学できればいいのだが、射点を含めた要所要所が検問でがっちりガードされているため、今後も含めてそういった公開は無いだろう。地元との距離が遠くなるわけである。
 どうもここは内之浦と比べると地元との交流が希薄というか、接点が飲み屋だけというか、そんな感じがするのだ。フェンスが設置されてしまったとはいえかなり奥まで入れる内之浦に対し、こちらはとにかくなんでも隠されているというか、何をするにもまずフェンスにぶちあたる感じだ。まあ平時の南種子町内に長時間居たことがないので即断は禁物だが、ふらっと訪れる観光客ですらこんな感想を持ってしまうのである。国際空港と似た警備と言ってしまえば、まあ確かにそんな感じでもあるが、まだ地元だけでなく国民に開発の意義を伝えなければならない分野だ。打ち上げだけでなく、いろんな分野で興味をもってもらうことが必用だと思う。がんばれ種子島宇宙センター、気軽な宇宙開発の場となるまで。

 さて時間になってバスに乗り込む。第1便はマイクロバスなので定員が少ない上に狭い。後に出る第2便以降は大型観光バスなので座り心地は良さそうだが人数も多く、じっくり写真を撮ったりするには人数の少ないこちらが好都合である。
 今日の見学ルートは「射点前→VAB内部→H-IIロケット7号機→総合指令棟」の順である。平日に比べてVAB(大型ロケット組立棟)見学が増えたのが違いだ。はるばる来た身としてはもっと見たい気もするが、それはまあ前出のような理由もあって難しいのだろうな。
 射点までは構内の制限速度を守ると10分ほどかかる。これが打ち上げ前の殺伐とした場面では守っているのを見たことがないゆったりとした速度である。打ち上げ前は警備の車両ですらかなりの勢いで走っているからなあ。それを知っているためか、今日のような平時はのんびりしていて気持ちよく感じる。
 また道ばたには沢山の花が咲いていて、なかなか綺麗だ。しかもそれがヒルガオなど夏っぽい花のため、南に来たんだなあと雰囲気を出してくれるのが良い。いやほんと、時間があれば花の写真をじっくり撮ってみたかったなどと、柄にもないことを考えたりする程だ。

 ガイド役職員による道中の案内は昨日と同じく宇宙センターの広さなどの話題である。また何故種子島が選ばれたかという問いかけもある。昨日も聞いて答えを知っている柴田は、黙ってどんな回答が出るか楽みにしていたが…珍答は無かったな、残念(笑)。
 これの回答は、ロケットは主に東に向かって飛ぶため、そこが海などでひらけていて安全が確保できること、そして地球の自転の力を利用できて打ち上げに有利な赤道にできるだけ近いこと、という二点。いろいろ条件はあるのだが、狭い日本では全ての条件を満たす場所は無く、これら二点が重視された。ちなみに条件がもっと良さそうな沖縄は、当時はアメリカに占領されていたため選考の対象に入っていない。もし沖縄だったら車では行きにくいけど、羽田空港からの直行便は多かったはずだよなあ。とはいえ今となっては、行きやすさで種子島の方がいいと感じるから、随分と慣れてしまったものである。
 それからH-IIAロケットのHの意味は何かという問いも出た。ちなみにNやJロケットは日本(JAPAN)の頭文字をとったのだが、H-IIになってからは燃料の水素のことであり、日の丸のことではない。もちろんヒドラジンとか物騒なものでもないし、平成のロケットという意味でもない。水素=hydrogenが正解なんだが、頭の中はそんなことでいっぱいだ。もしや寝不足?(※正解)
 なお以前のH-Iロケットについては、第2段こそ液酸/液水だが、1段目は液酸/ケロシンなので厳密にはHの意味を満たしていないかもしれない。ただ2段目が国産エンジンLE-5のデビューとなったので1段目以上に意味があったのだろう。
 それとガイドの人が聞いたような声だなと思っていたが、もしや昨日にもツアーを案内していた方ではないかなあ。(※恐らく正解)

 さて、検問所での確認を終えていよいよ射点前に降り立つ。昨日も来ているわけだが、二度目となれば…やっぱり写真を撮ることになる。この行動はパターン化しとるな。
 ただ昨日よりもより射点に近い位置で、第2射点の見え方などにも違いがあるため、全く同じというわけでもない。
 (※工事中のためか、行ける範囲がかなり狭い。そのため昨日と今日の画像には射点の角度などに違いが出た)
 ここで第1便の参加者全員で記念写真を撮るとのことで集合がかかる。寝不足の柴田で台無しにならないように、笑顔を取り繕う苦労が発生する。太陽の向きもあり、下手に笑うと怖そうな顔になるなと思ったのだが結果は…。(※寝ているよーな顔をしていた)
 ところで第2射点の工事の様子だが、舗装されていたコンクリと鉄筋を剥がしている。H-IIB打ち上げに向けて使えるかあらためて調査したら、かなりやばかったという噂も聞くので、来年度にも予想される初使用に向けての改修のようだ。
 ただそれら工事は射点全体に及んでいるため、従来のH-IIAロケットの打ち上げもすぐにはできない状態である。こりゃあ今年の夏の打ち上げは本当に無しなんだろうな。

 続いていよいよVABの中へ入る。撮影禁止の理由がよく判らんが、恐らくこれまた情報収集衛星のせいなんだろうなと思う。
 さて、入り込んだVAB内部の第一印象は、「天井が高い!」。50メートルもあるロケットが収まるのだから当然だが、吹き抜けの天井はそれよりも高いのだ。
 カメラはもちろん携帯電話の持ち込みすら禁止という厳しいお達しのためか、誰も天井に向けて「やっほー」とやらないで静かに見ているのが意外というかなんというか。
 (※やりたかったのか?・笑)
 さて、竹崎展望台のある方向、つまり南側のVABには第1移動発射台が鎮座している。こんなに近くで見るのはもちろん初めてだ。あの「黄黄青」と色のついたドアの目の前にある。思わず開けて中がどうなっているか確認したくなるが、もちろん禁止。
 また後ろ側に立ち入ることができないため、アンビリカルケーブルなどが取り付くタワーはよく見えなかったが、前面側にもいくつか蓋のついたパイプが出ており、ここから燃料や酸化剤などが注入されることが判る。
 そして下には移動発射台を運ぶ緑色の運搬車・ドーリーも納まっていた。56個ものタイヤで発射台ごとロケットを運ぶ力持ちだが、こうして正面で見るぶんには大型トラック並の大きさに見える。奥行きもそれほど長大には見えない。恐らく比較対象になるものがここではみんな巨大だからだろう。
 また発射台の上にはH-IIAロケットを組み立てるための穴が空いた足場が天井に向かって何層も設置されている。上の丸穴に対し、下側の足場の穴は十字型で、SRB-Aが4本取り付く204型に対応していることが判る。
 また北側の整備棟は移動発射台は無く、代わりに工事車両が何台か停まっている。H-IIBのための改修なのか、それとも補修なのかは不明。こちらも204型に対応した十字型の足場があるので、将来的は両方に204型とか、あるいはH-IIBが2機とか、豪快な構図になりそうで楽しみである。
 ただし、報道各社に公開すればの話だ。想像するに恐らくJAXAが撮った写真がぺらっと出るだけだろうなあと思えるのが悲しい。画像と文字がセットになってこそ取材だし、伝える量も変わると思うので、なんとか打ち上げ時の公開再開を希望したい。
 (※そのときに報道各社がちゃんと伝えられるかが問われるが、最近のレベルアップを見れば大丈夫…かなあ。なんかこー、慣れたとたん人事異動してしまうような…)
 
 さてVAB内部は射点を正面に見た場合、背後に島間港から陸揚げしたロケットを搬入用するための大きな扉がある。これは引き戸ではなくいくつかに分割した壁が上に昇っていく構造に見える。これは引き戸よりもかなり狭いのだが、これは発射台ではなくロケット本体だけ入ればいいので当然だろう。
 また左側には衛星搬入用の扉がある…のだが、これはどう開くのかはよく判らなかった。
 正面はロケットと移動発射台が出せるあの大きな引き戸なのだが、外からこれを見ると、開閉用エンジンからの排気用らしい大きなダクトがある。これがうなりを上げて、周囲への警告音(※曲目は「さくらさくら」)を流しつつ開いていくことになる。うーむ、これらの音も聞きたかったねえ。
 (※扉の開閉時の警告音は、打ち上げ前の射点移動時に検問所手前でなんとか聞くことができる。ただし今後もそこまで入れることが前提だが)
 VAB内部の見学は10分程度でおしまい。撮影不可の上に歩いて回れる範囲がえらく狭いので、その時間をフルに使ってあちこちに首を突っ込んでみたので悔いは無い。もっとも後でもう一度来るわけなんだが。
 (※「遠くから見るだけ」「動かない」「触れられない」という展示は希薄な印象になりがちだ。そうならないためにも自身で積極的に見る行動力が必要)

 VABの次はH-IIロケット7号機を昨日に引き続きまた見学。ここは撮影可のため、毎度いろいろなアングルでトライしている。暗めの倉庫なので感度が足りずにブレたり、他の見学ツアーの人が写りこんでいたりと、なかなかいい写真が撮れないのだ。筑波に試験機が行って片側が空いたので、これでも昔よりは条件はいいのだが、あとで確認すると失敗している。…何かあるのかここは(笑)。
 ここでは断熱材のサンプルが配られて、その固めのスポンジのような感触が実感できる。これは、もう飛ばないとはいいつつも本物のロケット本体の断熱材をつつかれたら、あっという間にボロボロになるだろうから、こうしてサンプルを配っているんだろう。そしてつつかれた原因がなんとなーく判るような気もする。
 (※宇宙へのパスポートで触れている描写があり、他に希望者が出たのだろう。ちなみに宮城県角田市にあるH-IIロケット地上試験機の2段目は、設置された当初は断熱材の感触をほぼ自由に触って確認できた。もちろんサンプルの断熱材と感触は変わらない。2回目に訪れたときには爪の跡が無数にあったのも覚えている。その後は風雨にさらされてコケが生えたりと劣化が進んだためか、似た色の塗料で塗り固められてしまい、感触が変わってしまった)
 ちなみに2段目の底には丸い窒素タンクが1個くっついている。角田の2段目は3個なので外したのかなと思って聞いてみたら、これは仕様によって必要な量が変わるため、たまたまこの機体は1個なのだろうとのこと。そうか、外して別の機体…例えば14号機…に使ったわけではないのか(笑)。
 また四角い座板がいかにも何かを取り付けるように配置されているのだが、これがあのヒドラジンのタンクを設置する場所とのこと。今はタンクは外してある。
 H-IIAロケット14号機が延期になった原因が、ここに設置されるヒドラジンタンクからの漏洩だったので、あらためてこうして見ると感じ方も違うものである。
 (※H-IIとH-IIAで共通部品とのこと)
 ちなみに入り口近くに、屋外シャワーなどと書かれている場所がある。まさか海水浴ではないよね?。もしや浴びたら即刻洗浄の必要がある物質用とか。…例えばヒドラジ…げふんげふん。

 ここを見学したら次は最後の総合指令棟である。ちなみに昨日は撮影可だったが、今日は駄目である。これは第2便のツアーから開始されるという模擬打ち上げ管制実演のためだと思うのだが、第1便はそれが無いので撮影してもいいような気がする。まあこれまで散々撮影したからいいけど。
 という訳でぱっと見て終了。バスも科学技術館に戻ってツアーも終了。あんまり見ていない気もするが1時間以上は過ぎているんだよな。やっぱり広いわ。

 次に参加予定のツアー第4便は13時半なので、それまで他の展示を見て回ることにする。そういやツアーに含まれずに公開している施設って無いのかなと思い、とりあえず職員の人に聞いてみた。
えーと、科学技術館以外に見られる施設はありますか?。
「ペットボトルロケット打ち上げや風船の配布がありますよ」
 …柴田が風船をもらって喜ぶ年齢に見えるなら嬉しいなあ(笑)。ちなみにヘリウムガス入り風船は飛行機への持ち込みは駄目っぽいので持ち帰りは不可能。というか、もし持ち込んでも高度が上がった時点で圧力に負けて破裂するだろう。実験という意味ではこれはこれで面白い題材なのだが、もちろんやってはいけない。
 (※飛行機の上昇・下降時には気圧の変化があるのは耳がつーんとするので判る。また上空でペットボトルを空にして蓋を厳重に閉めると、着陸後に圧力で潰れている)

 それとペットボトルロケットの打ち上げだが、これは野外にあるH-IIロケット実物大模型のそばで行われていた。子供の作ったものだから…と馬鹿にするのは禁物で、これがなかなか良く飛ぶ。H-IIロケット模型の後ろから先端付近まで飛ぶということは50メートルは楽々越えているのかな。まあ中には失速するものがあるけど、ノウハウがあんまり無いだろう低学年らしい子供ですらこの勢いである。もしこれの飛行距離増大に挑むとしたら、会社勤めの柴田なんぞがやるよりも、この子供達の方がはるかに伸びそうだな。
 それとこのペットボトルロケットの打ち上げで、ある試みをやった。それは打ち上げ撮影における「カウント・ゼロではなく、空中に飛び上がってから撮れ」というもの。ロケットまつりで公開された秘蔵写真の説明でそれがあったのだが、道川での打ち上げ撮影でそれが見事に実践されているのが判る。カウント・ゼロではまだ発射台で火を(※ペットボトルロケットの場合は水だが)吹き始めたロケットが写るのみで、迫力という点では飛翔している姿の方が絵になる。しかもそれは発射装置など比較対象がある方がいい。まあペットボトルロケットは水平に近い飛び方だし速度も遅いので楽ではあるが、なかなか気が抜けないのは本物と一緒。そしてゼロのかけ声とともにぶしゅぶしゅぶしゅっ!と数機がまとめて飛んだところでシャッターを押してみた。結果はまあまあ。これからもこういった機会に撮影を試みて経験を積むのがいいだろう。

 続いて科学技術館を見学しようと中に入る。とはいえ展示物はいつも通りで、今回のための特別展示などは無い様子だ。まあ昨日の閉館時間から朝までに入れ替えられるようなものでもないのだが、普段は無い実験用のものなどを展示しても良かったのではないかなあ。
 入り口のホールでは筑波などでもよく見られる実験が行われている。極低温でなんでも凍ってしまうぞという実験や、段ボール箱による空気砲の実験だ。もちろん子供が主なターゲットなので、大人の柴田にとってはちょいと寂しいねえ。
 (※空気砲:段ボール箱の一方に丸い穴をあけ、中に線香の煙などを充満させてから、箱の側面をぽんと叩くと、丸い輪になった煙がすーっと飛んでゆくもの。このためホールが線香の匂いでまるでお寺や仏間のようになっていた・笑)
 また床に種子島の衛星写真を貼り付けるという展示もやっていた。もちろん床に広げるほどの大きなものだ。撮影は最近のもので、衛星は「だいち」だったはず。歩くときに島を踏みつけると感じが悪いので飛び越えていたが、平気で踏んでいる人もいる。そこのあなたは、さしずめ種子島に来襲した巨大怪獣ですか(笑)。
 宇宙食の試食もあったが、これはここの売店や丸の内のJAXAiでもよく売っているタイプで、とにかく何でもフリーズドライをしてみたというもの。内之浦でも試食したけど、おやつにはいいが、主食とするには食い応えが無い感じ。確かにこれで腹いっぱいにしろと言われるときついかな。
 また日本宇宙食認定のカレー販売もあったが、食堂が混みすぎていて断念。

 時間は有り余っているので比較的空いている常設の展示をふらふら見て歩いていたら、例の重力モデルの鉄球転がしに異変を発見。おおっ、鉄球が3個も同時に転がっている!。
 いつもは1個がぐるぐる回るだけなのだが、一般公開日で出血大サービス中なのか、いつもより多めに回っております状態。こ、これは自分でもやってみたい。鉄球三兄弟とか鉄球ジェットストリームアタックなんて大技が開発できそうではないか。
 …しかしここの機器はデリケートで、発射装置まで鉄球を運ぶ部分がよく停止してしまう。そして地元らしい子供が、そのスイッチをバンバン叩いている。出てこないって言ったって、そんなに激しく押したらまた停まるぞおと思っていたが、結果としてやっぱり停止してしまう。職員の方がリセットしてくれないかなとしばらく待ってみたが、現れなかったので残念ながらそこを離れることにした。平日でも3個バージョンをやってくれないかな…。

 そしてツアー第4便の集合時間になったのでバス乗り場に向かう。あらら、今回も第1便と同じマイクロバスか。こりゃ変化が無いかもしれないと感じたが、最終便まで満席であり、変更も無理っぽいのでそのまま乗り込む。
 そして射点に三度目の到達を果たす。今回はもう少し射点に寄っていたのでまた写真を撮りまくる。今回も記念撮影があったが、隅っこで目立たないようにしていた。
 続けてVAB内部見学だが、こちらは行ける範囲が第1便の時より微妙に狭くなっていた。恐らくドーリーの両側に入り込む見学者が多かったのだろう。ドーリーの正面に立ち入り規制のコーンが置かれてしまっている。見られて困るものでも無いと思うが、事なかれ主義が蔓延しているようですな。何が見学者の興味を引き喜ばせるかが判っていないとしか…。

 ここの見学を終えて検問所に戻る途中、側溝の蓋の上で昼寝をする猫を発見。もちろんセキュリティ用フェンスの内側である。もしかすると打ち上げ時に、誰もいない射点でロケットの打ち上げを見上げているかもしれんな。少しうらやましい感じがする。

 続けて総合指令棟に向かう。今回は中に職員がスタンバイをしていて、打ち上げシーケンスを実演している。女性2人の男性1人の計3人という最小構成で、もちろん後方に陣取るお偉方もいないという状態だが、実際に稼働しているのは初めて見る。
 ここではカウントダウン音声は自動だが、あの中に混じる「第1段液体水素系準備完了」「SRB−A点火、リフトオフ」「小笠原局は正常にロケットを追尾しています」を実際にやってみせてくれているのだ。これはなかなか面白く、この施設が実際にこうやって稼働するという実例を見せる良い方法だ。それとずっと前から聞いてはいたが、この方々の声であったか。少し緊張感が無い読み上げだったが、本日3度目の上に演習でも本番でもないから仕方ないだろう。
 ちなみに画像は14号機のようだったが、あの強風によるどたばたの再現はもちろん無し。また撮影禁止なのは、もしかしてこの職員の方々のためかな?。JAXA声優陣としてアイドル並の著作権保護があるとか、あるいはリクエストで6号機の再演が来るのを恐れているとか(笑)。
 しかしこれがこの総合指令棟での業務なのか。つい先日、竹崎でその声を頼りに打ち上げを見ていた者としては、なかなか興味深いものであった。
 ただガラス張りの向こう側なので、いろいろ聞けないのは残念かもしれない。
 しかしこれがあるなら第2便から見たかったかなあ…と思ったが、大型バスの人数がこの狭い見学室に入ると身動きができなさそうである。
 ついでに要望としては打ち上げ時も公開してほしい。打ち上げ成功時に関係者が拍手や握手などをしている姿を映すのが警備兼用のカメラだけでは寂しいからね。もっとも打ち上げを見ずにここに缶詰となるのは我々にとっては本末転倒かもしれんが(笑)。

 そして科学技術館に戻って種子島宇宙センター一般公開見学を終了とする。いや公開時間は16時まであるのだが、種子島にはまだまだ宇宙関連施設があるのを忘れてはいけない。それが中種子の増田宇宙通信所で、衛星の監視やロケット打ち上げ時にテレメトリの送受信で活躍する施設である。
 (※他にもアンテナなどを持つ施設があるが、一般公開は無かった)
 ここは南種子町にある宇宙センターから車ならば30分程度で着くような距離なのだが、これまで柴田は前を通ったことはあれど入ったことは無い。入れないわけではなくて一般向けに常設の展示室がちゃんとあるのだが、平日のみという公開日設定もあって、これまで機会が無かったのである。今回のチャンスを逃すと、次はいつになるか判らないので行く事にした。
 まあそんな訳で宇宙センター内の道路を南から北まで縦断して堪能し、県道経由で中種子町に向けて走り出した。
 途中、増田宇宙通信所一般公開はこちらという案内看板を見つけて右折してみる。いつもは見向きもしない交差点だったのだが近道かな…って、わあ、ここはどこだあと思う程に、のんびりした光景とアップダウンの続く道に不安になる。気分的にかなりの距離に感じたが(※実際には数キロ程度)、しばらくして見覚えのある交差点に出たので一安心。そうか、ここは確か行くときにこっちでなかったかと悩んだ交差点だったな。ナビも何も無い中ではこういった抜け道もちょっとした冒険気分になって面白いものである。
 そして増田宇宙通信所の入り口から入る…おおっ、サンダーバードだ!(笑)。道の両側にヤシの木が林立するという光景は、そう思わせるに十分ではないか。これはもしかしすると設計者がそんな趣味の人だったのかもしれんな。

 玄関先の受け付けで簡単に記帳し、いよいよ中に入る。まず目立つ展示はパラボラアンテナの操作卓である。なにしろパラボラしか無いような施設なので唯一の可動展示物と言っていいかもしれない。実際に操作できるのは玄関の向かいにある中規模なパラボラアンテナで、昔はもちろん現役だったのだが、衛星の電波の周波数帯が上がって引退したとのこと。大きさとしては直径20メートル級のものに見えるが、正確な大きさを聞き忘れたので目測でしかない。(※後に確認したところ18メートルらしい)
 さて、このパラボラアンテナの操作は、ふたつのプラスチック製のつまみを左右に動かして行う。一方がアンテナの皿の上下で、もう一方が左右だ。これが柴田の固定観念と逆の配置なのか、よく間違える。…こういった操作ってやったことは無いはずなんだがなあ。
 また微調整用のダイヤルもあって、目測では判らないほどの微妙な操作もできるようである。
 今回はBSなどの放送衛星に向けるという操作を実際にやってみることができる。メーターに印がついているので、そこまで動かせばいいという楽勝モード。もちろん見学者に衛星の座標のみ教えて追尾させるという試練は無し(笑)。
 ちなみにこのアンテナでロケットを追尾する場合は、最初にここに来るという向きにセットして待ち、電波が入ったら自動追尾のボタンを押すそうである。手で追尾していては間に合わないし不正確なので、あらかじめ座標を入力しておくようだ。そりゃ当然か。
 ここが開設した昭和49年頃は、今ほどコンピューターが発達していない。初代ファミコン以下の簡単なものですら、とてつもなく高額だった時代だ。だから半自動ともいえるこうした装置であっても当時は最新式だったのだろう。もちろん現代のシステムではそういったものが全てコンピューターで自動化されているはずだ。
 尚、以前は送信用の平面アンテナも設置されていたらしい。内之浦で見たものと同型のようだが、無くなってしまった現在では確認のしようがない。

 またパラボラアンテナというと、お椀というか皿の凹んだ部分がまっすぐ天を向いている姿を見たことがある人も多いと思う。それには理由があって、台風などの強風下ではアンテナが勝手に動くのを防止するために、最も安定する真上を向けた上でピンをさし込んで固定するそうである。面積が大きく風の影響をもろに受けるパラボラならではの苦労なのだが、それなら14号機の時は大丈夫だったのかとお聞きしてみた。あんな強風下で追尾するのだから、パラボラには相当な負荷がかかるはずだと思ったのだが。
 そしたらなんとぎりぎりっぽい風速で、ホントに打ち上げるのかと思ったほどであったとか。あの時、射点付近では打ち上げ制限の風速に近い瞬間最大風速15メートルほどの風だったのだが、ここ増田では30メートル近い暴風だったらしい。30メートルといったら本土ならば台風並である。いやもうあの日の打ち上げがロケットだけでなくて、こういった施設まで含めてぎりぎりいっぱいの打ち上げだったのではないかなあ。
 もっとも打ち上げの中止の場合は翌朝からまた準備があると心配していたそうなので、もしかするとここでは余裕だったのかな。なにしろ風光明媚な場所の代償として、台風の時には何も遮る物がない吹きさらしの場所で、そういった風にも慣れているだろうし。

 展示室にはあとはH-IIAやアリアンなど内外のロケット模型がいくつかと、往年の人工衛星の模型などが置かれている。これってもしかしてここで打ち上げを追尾した衛星達なのかな。
 また例によってペットボトルロケット打ち上げも行われているのだが、南種子町でも同様のことをやっているためか参加者は多くはない模様。まあそれなら逆にじっくりやれるというメリットはありそうだ。
 ちなみに過去、一般公開にあわせて、ご当地ヒーローのタネガシマン・ショーを開催したことがあったらしいが、そのときは物凄い混雑であったとのこと。そういや最近はあまり聞かないが、ご当地ヒーローの方々はどこで活躍されているのかな。

 あと何か見るべきものはないかと施設内を歩き回る。奥の部屋で子供向けに宇宙服で記念撮影をやったいたのだが、その隣の部屋に広報用アンテナ操作卓の親玉のような大型操作卓を発見。これらは以前、ここでパラボラを操作していた頃のものだが、今は筑波からの遠隔操作になっているため引退しており、監視カメラの映像だけが使われているものだそうだ。しかし紙で出力する機器なんぞ久しぶりに見た気がするなあ。これの稼働状態がもう見られないのは残念な気がする。
 また当時の名残か、竹崎展望台の記者室にあるカウントダウンクロックと同型のものが天井からぶら下がっている。これが今も稼働しているのかは不明だが、打ち上げ時にはここにも人が入るようなので、きっとカウントダウンを行っているだろう。…14号機の時にどう動いたかしわからんが。
 (※14号機:報道関係者などのために竹崎の屋上にも臨時に大型のカウントダウンクロックが設置されるのだが、相次ぐ延期に正しい値を示さなくなってしまった)

 さすがにアンテナしかない施設ではこれで見学も終了。最後にアンケートに記入してスピードくじを引く。…赤ってなんですか。あう、残念賞ですか。ボールペンをいただいて車に戻る。
 (※しかしこのボールペンは良い品だった。少なくとも最近の一般公開で配っていた中では最も使い勝手が良い)
 さて全ての見学は終了したがまだ時間はある。もっとも南種子の宇宙センターに戻るには微妙に時間が足りず、かといって空港に直接向かったら、かなりの時間を喫茶店などでつぶす羽目になる。…そうだ、中種子で昼飯を食うか。

 という訳で海岸沿いで写真を撮ったりしながら中種子の中心街に向かう。ただもうゴミなどは捨てる場所が無いだろうから、総菜や弁当を買ったりはしないつもり。そんな訳で観光案内などによく掲載されている料理店に向かう。そう、ここで種子島うまいもの計画に再度挑戦するのだ…って、まだ準備中とのこと。ついてないなあ。
 仕方なく近くの生協に入ったが、本土から輸入したような材料のものしか並んでいない。おかしいなあ、たまたまそういった時期になってしまったのかな。
 観念して何も買わずに出て、目の前のスタンドでガソリンを入れて空港に向かう。空港周辺にはガソリンスタンドが無く、ここ中種子で給油すると、もちろん目減りして返却というレンタカー屋泣かせの場所だ。借りる観光客の増大も打ち上げ時などの一時的なものだから、今後も空港周辺にガソリンスタンドが進出することは無いんだろうな。
 ちなみに海岸沿いの国道や、西之表市から県道で来る場合には途中にスタンドがあるので利用可能である。もっとも島のことだから、営業時間や土日の営業に注意しなければならないだろう。

 空港に着いてレンタカーの中で荷物の整理をする。このあと喫茶店で温かい飯をと思っていたのだが、食べ残した大量のパンがうっかり発見されてしまう。しまった、これをなんとかせねばいかん。暑い陽射しの中で車内に置きっぱなしだったこともあり、早急に食べなければならないな。捨てるというのは主義に反するので無し。
 という訳で空港の自販機でジュースを買い、とにかく腹におしこんだ。おかげさまで満腹であるが、種子島の食事は殆どがパンという寂しい結果になる。今度来る時は、もう少しいいものを食いたいね。
 またいつもは必ず行くおみやげ屋さんにも行っていない。夜中では開いていなかったから仕方ないけど、今日の一般公開終了後に無理すれば行けたかもしれないだけに残念。いろいろと思惑通りに行かない結果となった。

 ところで降り立ったことはあれど、種子島空港から飛び立つのは、意外にも今回が初めてである。いつもは予約していても高速船に変更したりしているので、使ったことが無かったのだ。柴田の航空券予約ではキャンセル率がダントツの第1位だったが、さすがに夕方は高速船も無くなっており、今日の選択肢はこれしか無い。
 さて大規模な空港と違い、小ぢんまりとした種子島空港では搭乗間際にならないとセキュリティ検査が始まらないそうだ。しばらくお土産店を見たり、水泳のオリンピック選考の中継を見たりして待っていたが、そういやレンタカー屋さんが受け取りにまた来ないことに気付く。まあ前回の例もあり、こんなこともあろーかと鍵の受け渡しについては事前に取り決めをしておいたのだが、心配になって唯一来ていた他のレンタカー会社の人に聞いてみる。すると、受け渡しを決めていたなら来ないだろうとの返事。まあ今回は殆ど何事も無かったからいいか。
 (※殆ど:借りた当初、ヘッドライトの光軸調整が目一杯上になっていた。気付くまで対向車はまぶしかっただろう)
 所持品検査が始まったのは搭乗時間直前。こんなのんびりしていて間に合うのかなと思ったら、乗客がやたら少ない。行きは満席だったが、帰りは20人弱といった程度か。確かにこれなら間に合うけど、なんか寂しいねえ。
 搭乗待合室に入ると、すぐに飛行機への搭乗案内が始まったのでゆっくりしている暇すら無い。そしてきっちり人数が揃ったためか離陸時間より微妙に早くQ400は動き出した。
 どちら向きに離陸するのか興味があったが、やはり着陸時と同じく太平洋に一旦出るため、東向きに離陸開始。そして左旋回をして鹿児島空港に機首を向けた。…逆向きに離陸して燃料を節約すればいいんじゃないかと考える。
 上空は雲が多かったが、例の馬毛島は逆光の中でもよく見えた。米軍のFCLP候補地とされてはいるが、どうなるのかね。この馬毛島といい、値下げ合戦になった高速船といい、いろいろな思惑があるのがここの特徴でもある。

 鹿児島空港上空では、もう暗くなりかかっていたため誘導灯がよく見える。特に木々の間で点滅するフラッシュがきっちり直線に並んでいたのが印象的である。これは地上ではよく判らんだろうな。
 そして鹿児島空港には例によって早めに着陸。ここでしばらく待ち時間があるので、パンで膨れた腹をなだめつつ黒豚がおいしいと聞いていた店に入るが、運悪く満員だったりする。空席が出るまで待つほどの時間は無いため、仕方なく外に出た。なんか今回はどうやっても俺にうまいものを食わせないという意地悪な運命のようである。
 ええいそれならばと、とにかく空いている別のレストランに入り込んで黒豚丼を注文する。今回唯一の贅沢である。しかし、あつあつの湯気を立て肉汁あふれる黒豚丼がどーんとテーブルに置かれたとき…「ただいまの時間帯は所持品検査場が大変混み合います。お早めに検査をお願い致します」…という無粋なアナウンスがある。そんなに混み合うなら早めに行く必用があるのかと急いで食べる羽目になる。ああ、なんかもう味わう暇も無かったわ。
 慌てて食った後に検査場に行ったら、たしかに長蛇の列。出発時間が近い乗客は出発案内板を見上げつつ青くなって係員に聞いているが、列に並んで下さいという定型文しか返ってこない様子。しかしこれってさっきのアナウンスで集中したのではないかな…。

 ちなみにここの出発案内板は電光掲示板ではなく、ぱたぱたと板が回って数値が変わる方式だ。反転フラップ式案内表示機とかソラリー式と呼ばれることを、事前に笹本さんに聞いていたので興味をもって見ていた。昔は一般家庭でも時計などでよく見られた形式だが、液晶や蛍光表示管に取って代わられ今では殆ど無くなっている。空港や駅ではまだ見かけることもあるんだが、航空会社が増えた場合には新たに板に描いたりとメンテナンスが大変らしい。しかし狭い表示板の中に航空会社のロゴを描くには荒い表示になりがちなLEDよりは有利に感じる。まあ、鹿児島空港ならば航空会社の増減もそんなにないだろうから、このまま使い続けられるかな、と考えていた。
 …こんな暇つぶしができるほど人が並んでいるのだ。いつもならこの案内板などは一瞥しただけで通り過ぎ、すぐに手荷物検査場に入れていたのだが。
 まあ 柴田は40分強の待ち合わせがあるのでこのように余裕だが、もう少し遅かったら慌てていたかもしれない。40分もあれば大丈夫だろうと楽観しなかったのが勝因か。

 しっかしなんでまたこんなに混雑するのだろう。過去に鹿児島から撤退した航空会社にSKYがあるが、それは搭乗率の悪さが原因とも言われている。でも目の前のこれを見ていると、とてもそうは見えないよなあ。…あっ、もしかして大河ドラマの影響かも。アニメーションやドラマなどが旅の動機になるというのは単純だがよくあることだ。
 だが歴史を辿るのが面白いのと同様に、歴史を作る方も面白さがあるのだ。そう、宇宙開発は今、せっせと歴史を作っている最中なのである。その現場にいるという面白さは、造られた歴史よりももっと面白いと思うがなあ。という訳で、鹿児島に観光の際には種子島や肝付町にも足を伸ばしてみようと何気にPRしてみる(笑)。

 混雑はしていたが検査場に入ればさくさくと進んで無事に通過する。ここから羽田まではJALの席がとれなかったこともあり、スカイネットアジア航空(SNA)で飛ぶことになる。SNAはMV6打ち上げのときに宮崎空港から使ったことがあるが、料金が安いかわりに機内サービスが無かったのを思い出してペットボトルのお茶を買って乗り込んだ。が、この便はANAとの共同運行で、あちら側のサービス基準が適用されており、機内サービスがちゃんとあった。そういった意味ではお得に感じられる。
 いつもの癖で窓際の席にしたが、既に夜になって外は真っ暗な夜空しか見えない。機内の照明も暗めになっているのでノートパソコンを広げると明るくて迷惑になりそう。
 そんな訳で、水平線から昇ってきた月を眺めつつ退屈な時間を過ごす。

 羽田は夕方の離着陸ラッシュのためか少し遅れて到着。着陸時に翼の部分からライトがにゅっと出てきて照らすのが面白い。風で多少揺れたが問題なく着陸した。
 さてここからどうするかだ。最初に考えていたのは深夜バスで山形に戻る方法だったが、明日は仕事もあるし疲れるので無しにした。行く時と同じホテルに飛び込んで、本日の行動は終了となる。


2008年4月21日 帰還

 始発の新幹線に乗って山形に向かう。朝飯は500円の弁当で済ませ、着いたらそのまま出社という慌ただしいことになる。
 次に鹿児島に行くのは15号機か、あるいは観測ロケット、または内之浦の一般公開となるであろう。

2008年4月20日

これは2006年9月10日に撮影したもの。宇宙へのパスポート2にも記載されている廃船。


こちらは本日の朝に撮影。飛行機から見えなかったので現地に確認しに行ったら廃船は跡形もなかった。


一般公開当日の宇宙センター。


これは2003年9月26日の統合直前の植え込み予定地。


2003年11月26日の同植え込み。ちゃんとJAXAという文字になっていた。


そして本日の様子。いやあ立派に成長しましたなあ。


一般公開は平日と同様のバスツアー形式。ツアーの便数が多いのと、見られる施設がひとつ多いのが平日との違い。


第2射点。地面を掘り返して工事中。やはりH-IIBのためらしい。


余剰水素燃焼用のバーンポンド。中を覗き込むには脚立がいりそう。


番号のみ赤く残っているが、元は全て同じ配色だったはず。前回の打ち上げで燃焼ガスでも当たったかと思ったが、これを見ると単に退色しただけかな?。


黄黄黄は第3移動発射台。第1発射台はVABの竹崎寄りの中に収まっている。もう一方の整備区画は工事が行われていて、それで外に出ているようだ。


防火用スプリンクラーの貯水槽かな。放水とともにすーっと水面が下がっていくと聞いたことがある。


射点側からVABを見る。


路面にはドーリーの車輪の跡が残っている。


吉信発射管制棟。外観のみで中は見られなかった。1メートルのコンクリに守られている上に管制室は地下にある。ちなみにVAB内部と総合指令棟は本日は撮影禁止なので画像は無し。VABはセキュリティのためで、総合指令棟は打ち上げ管制の実演のため…なのか?。


この黒っぽい四角いベースの上にヒドラジンのタンクがつく。丸くて袋に入ったのは窒素タンク。


昔は一般公開といえば溢れんばかりの入場者だったが、今は通年でツアーがあるためさほど混まなくなったとか。


お色直しをして綺麗なH-IIロケット実物大模型。


ロケット模型の前でペットボトルロケットの発射が行われた。意外によく飛ぶ。またモデルロケット打ち上げも行われた。


今回の謎。屋外シャワーって一体どういった用途なんだろ。


続いて中種子の増田宇宙通信所へ。これは引退し広報用に使われているパラボラアンテナ。ちなみに周波数帯が低いのが引退理由らしい。


入り口はサンダーバードの世界だ。


広報用のパラボラを制御する操作卓。今はBS放送に合わせてある。


ここでの制御は現在は行われておらず、筑波からコントロールする。そのためモニター以外は使われていない。


時代を感じる模型達。これらの打ち上げをここで追いかけたのだろう。


近くの海岸から見た宇宙センター。今回はこれでおしまい。


帰りもQ400。


種子島空港出発待合室。さすがに何もない日はガラガラである。


鹿児島市上空は一面の雲。勝手に振る舞う水の分子も、こうして一定のパターンをもつ雲になるから面白いものである。

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